#9 今日幸せがまた一つ咲いた🌸


「今まで死ななくてよかったね」


「生きててよかったです…😭」


この会話ができる日が来るとは…
突然舞い降りてきてくれた奇跡のような
どんなにか彼女にとって 幸せな言葉…✨



彼女は、20年前自殺企図を繰り返し、その際に骨折して手術を必要としたために、大学病院の精神科に3ヶ月入院して手術とリハビリとなった。
私は当時研修医として担当した…

「助かってしまった…」
「困る」「どうしたらいいか分からない」
「生きてるのが辛い」「先生 死にたい」
「死ぬ方法ばかり考えてしまう」

朝晩と彼女に寄り添い、言葉に耳を傾けて、次第に面談に向かうのが苦しくなる自分がいた。
 彼女の辛さや苦しさはどう和らげられるのか 
 なぜ生きていかないといけないのか 
当時の私には希望を見出すことが出来ないまま、ただ寄り添い励ましていたのだと思う。
やっとの思いで退院した後も 彼女は辛くなる波の度に希死念慮とリストカット・飛び降り・首吊り…自殺企図を頻回に繰り返していた。
いつ成功してもおかしくなかった。

その後 私は県内を転々とし、
彼女は大学病院への通院も途絶え、
無為自閉な生活の中で高齢のお母さんの介護が負担になり生活が破綻しかけたため 当時赴任していた開業クリニックでたまたま私の外来日に13年ぶりに再会することになった。
偶然か必然かの再会に驚きながらも、彼女も年を重ねてアグレッシブな希死念慮は消失し、人生に哀しみとあきらめだけの弱い瞳になっていた。

医療不信から信頼関係を構築するのに2年、ようやく定期通院してくれるようになった。
その後依存していたお母さんが認知症で施設に入らなければならなくなり 
自立をせまられて一人暮らし生活へ 福祉を活用して なんとか順応した。
作業所に通所できるようになり 初めてのお化粧もした。
希死念慮が強くなると強制的な入退院を繰り返した。
出会い系サイトの脅迫や性被害からも 自分を大切にするように繰り返し会話を重ねた。
年末にギリギリまで入院拒否して限界を越え、どうしたらいいか分からないという彼女と1ヶ月以上に渡って丁寧に話し ここまでこれた自分を信頼するように伝えた。
今年になり彼女は自分で入院加療を決めた。

そしてこの春退院して 

等身大のお付き合い出来る方と出会い、今日はびっくりするほどの可愛らしい笑顔と服装で診察室に入室してきた。
彼女が今感じている幸せを共有できることがこんなにも幸せ。
生きることを望まなかったけれど 彼女は懸命にずっと生きていた…

「今まで死ななくてよかったね」
「生きててよかったです…😭」



彼女に関わって支えてくださった方全てに感謝します